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イヌ科イヌ属の家族と暮らす


  見えていなかった「静かな興奮」

私には、自分でスピンクとキューティーとシードをハンドルしてどこへでも出かけられる、ということが一番大事です。前回書き出したような、イヌ属に対する理想は特にありません。一番体が大きくて力も強いスピンクが、トレーニングで完璧ぶりを発揮していたころは、意識しなくてもほぼできていました。キューティーとシードは、スピンクに付き従っていました。
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それが、あの事件で私とキューティーが襲われて以来、パックはガチャガチャになってしまい、キューティーのスピンクに対する極端な転嫁行動(八つ当たり)も日々ひどくなり、毎日のほほんとしていた散歩が、恐怖と緊張の時間になってしまいました。

そんな私の目から何枚ものウロコをはがしてくれたのは、MASUMI HARA のメルマガでした。MASUMIさん本人は、
 「犬という生き物の心理を理解するための情報です」
 「犬が分かれば犬は変わります」
 「犬たちの思いを人間たちに伝えたい」
 「本当の犬好きをもっと増やしたい、もっともっと幸せな犬を増やしたい、という思いで書いてます」
 「躾け本ではありません、飼い主さんへの教科書です」
とコメントしています。

メルマガのサンプルを一読した時点で、すでにウロコがぽろり。
 「常に飼い主の都合で挨拶をさせること……これ、大事です」
スピンクもそうですが、自分は相手を嗅いでも、相手が自分を嗅ぐのは嫌い! というコがいます。そういうコでも、保護者ががっちり支えて嗅いでもらうのが大事だそうです。キャンキャン言うコもいますが「びっくり」であって苦痛ではない、と書かれていたので考えてみると、確かに一番騒ぐキューティーの「キャン」は、8割はわがままでした。

そして、私自身が問題を解決できないでいた原因のひとつが「自分のイヌをちゃんと読めていなかった」ことです。 MASUMIさんは、「まずは、いきなりLeaderに、なろうとするのではなく、イヌの心理を読めるReaderになりなさい」と言っています。

写真MASUMIさんは散歩をとても重視しています。事件後、我が家で最初に問題が出てきたのも、やはり散歩でした。パックのバランスを整えるためにも有効な散歩。リードをつないだ状態で歩くのが散歩で、親が我が子の手を引いて歩くのと同じです。そして、話ができない相手に話しかけるツールがリードです。ノーリードの散歩で関係性を築くことは、不可能だと思って間違いありません。 「私はうちのコに常に話しかけていて、うちのコも理解している」という方もいるかと思いますが、オンリードの散歩で我がコをもう一度、Readしてみてください。我がコの気になる点は、だいたい読めてくるはずです。

キューティーはすぐに興奮するのと、恐がりなのとで、スピンクに依存していました。転嫁行動の対象がスピンク限定なのはその表れなのですが、意識して見ていると、きっかけを与えているのは、実はスピンクだということがわかりました。スピンクがガードドッグとして身構えたときの静かな興奮が、敏感なキューティーには増幅して伝わってしまうのです。さらにそれが、もともとパックでの生活経験のないシードに伝わって、まずシードが吠える、次にキューティーがスピンクに八つ当たりで飛びかかる、するとスピンクがキューティーを押さえ込もうとする、キューティーがギャンギャン言って抵抗する……。これが、ドミナントなスピンクがドミナントなイヌ属と出会った時に起こるお決まりのパターンになっていました。

最初、「興奮しやすいキューティーに問題がある」と考えていた私は、スピンクの「静かな興奮」に気付いていませんでした。楽しく落ち着いた散歩は、リードがたるんで「し」の字になっていなければなりません。執拗に匂いを嗅ぐことにハマったり、リードを引っ張ったりしないものです。匂いを嗅ぎながら,ガシガシと引っ張って歩くのはハント(狩り)です。そう言う意味では、ハントになりがちに見えたのもキューティーの方でした。

でも、ドミナントなイヌ属と出会った時の反応は、全く違います。 スピンクは、胸を張ってしっぽを高くあげ、頭から突っ込んでいきますが、キューティーは、スピンクがいないとしっぽを下げて私にくっつきます。本当のきっかけはスピンクの「静かな興奮」にあったのです。

その興奮が始まっているのは、実はお散歩に出かけるずっと前の、家の中でした。出かける気配に敏感なスピンクは、「出かける」と思うと自分のおもちゃ箱へ行き,ピコピコ鳴るオモチャを出して来て、鳴らしながら部屋を走ります。笑える光景ですが、これは「攻撃」に直結するのです。どちらも「興奮」という点で見れば、同じ状態だったのです。

では、出かける前に、まずやるべきことは? というと、「興奮を落とすこと」でした。続く→

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