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イヌ科イヌ属の家族と暮らす

写真
  パックの崩壊

スピンクは、いつも陽気でおちゃらけていて、どんなイヌ属も怖がらない自信満々のドミナントです。ドッグランでキューティーが他のイヌに噛まれて悲鳴を上げた時、飛び込んでいって体当たりをしたり、体を割り込ませて阻止したりしたことは、それまでにもありました。でも、自分から攻撃をしたのはこの時が初めてでした。

襲われたキューティーは、案の定その夜、発作を起こしてしまいました。今はもう克服しましたが、しばらくの間は未去勢の♂に対してのトラウマが残り、ビクビクしていました。一方、スピンクの変化は、もっとずっと大きいものでした。

それまでも私とトレーニングを続けていたスピンク。だからこそ、とっさに「NO! STOP!」の指示が入りました。でも、この事件で我が家のパックストラクチャーは完全に崩れました。事件の日、もう一人の保護者である私のパートナーが留守にしていたのも大きかったと思います。結果としてスピンクは、私とキューティーとシードというパックを守る立場、つまりパックのリーダーになってしまったのです。

同じイヌ属に対して敵意を持って吠える事はなかったスピンクが、パックで歩いている時にドミナントな相手に出会うと、自分から先に吠えるようになってしまいました。そうなると、キューティーとシードにも興奮がうつって、みんなでガウガウ言い出します。さらにキューティーは、転嫁行動でスピンクにガウガウ。キューティーはサミッシブなので、他のイヌ属にはガウらないのです。

写真トレーニングを続けてきて、キューティーのあとシードが我が家にやって来た時も何の問題もなく、むしろとても仲が良かったのに。たった1回の事件で、ガタガタになってしまいました。

その時は焦るばかりでしたが、今は理由がわかります。スピンクがパックのリーダーとしてふるまうことを私が許してしまっていたからなのです。「お前はそんな責任を負う必要はないよ。私の後ろで今まで通りに、のほほんとしていなさい」とはっきり伝える行動を、私自身がスピンクに対して取れていなかったことが原因でした。

スピンクは、もともとトレーニングにトリーツ(おやつ)もオモチャも使いません。興味を示さないからです。スピンクのモチベーションは、「自分自身が楽しいか、楽しくないか」だけにかかっていました。元来陽気な性格なので、それでもうまくいっていたのです。が、事件の後は指示に従わないことが出てきました。「やりたいからやっている」は、裏返せば「やりたくなければやらない」でした。

指示の入らない大型犬を連れて歩く事は、いつ暴発するかわからない銃を持ち歩くのと同じ、と私は考えています。一歩家を出たら、ドミナントなイヌ属はいくらでもいて、そのイヌ属をハンドルしている(連れている)ヒトがそのコをコントロールできていないことなんて、ざらにあるからです。いつ暴発するかわからない銃になったスピンクがリーダーになってしまったとすると、その影響を受けるキューティーも落ち着きがなくなり、以前より興奮しやすくなってしまいました。

事件は、パックの崩壊とともに、私とスピンクの関係も壊し始めたのです。
しつけって???
トレーニングって???
かなり、迷い始めました。続く→

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