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イヌ科イヌ属の家族と暮らす


  イヌは群れで生きる

当時の主治医に言われたことは、「イヌは群れで生きる動物」ということでした。
そして、♂でも♀でも、生きていくためには必ずお互いの順位を決める、ということです。

写真当時のキューティーは体が弱く、精神と情緒の成長にも遅れが目立ちました。まず、ヒトに指示されているということを理解するのに半年。実際に指示でオスワリができるようになるのに、なんと1年……。スピンクなら半年前に1時間程度でできたことが、です。 そして、くるくるくるくる回り続けたり、恐怖から噛みついたり。普通の家庭で暮らすのは無理ではないか、症状が神経の病気に由来する場合は進行が早く助からない、安楽死を考えてみて、とまで言われたのです。

さらに、スピンクが先に去勢手術をした場合、スピンクは未去勢のキューティーの下位になってしまう。群れとして、こんなに不安定な相手の下位にいることは、スピンクにとってどれだけストレスになるか、想像を絶する、とも言われました。 キューティーの去勢ができない以上、スピンクは去勢するべきではない、というのが当時の主治医の考え方でした。

キューティーの治療方針に対する考え方の違いで、その後は別の獣医さんにお願いすることになりましたが、そのころにはキューティーにてんかんの発作が出るようになり、スピンクも発作を起こすようになっていました。その先生は「てんかんの発作が手術中に起きたら命に関わる。去勢は、そんなリスクを冒してまでするものではない」という考えでした。

「それでも去勢してほしい」と言うほどの知識もなく、この件はそのままになりました。でも、同胎の未去勢の♂同士としてのスピンクとキューティーは、驚くほど仲が良く、特別な問題はありません。けれど、スピンクとキューティーの成長、特にキューティーが最初の診断からは考えられないほどに成長してくれてから、新たな問題が起きてきました。

地道にトレーニングを続けたキューティーは、今ではたいがいの指示は理解しますし、どこへ連れて行っても、一番問題がないです。興奮しやすいところは変わりませんが、自分より小さいコが大好きで、そういうコとも上手に遊べます。でも、ちょっとうまくいかないことがあると、全てスピンクにぶつけるようになったのです。

遊びたくて近づいたコにガウられた時など、ガウガウッとやり返す相手はスピンク。スピンクは、そんなキューティーをマウントで押さえ込んで、おとなしくさせます。そう言う意味では上下関係ははっきりしているのですが、とにかく転嫁行動(八つ当たり)の対象はスピンク、という状態が続きました。そして、そんなキューティーを押さえるスピンクには、「このファミリーのパックをまとめるリーダーは自分だ」という自覚が生じてきていたのだと思います。

とにかく、トレーニングにおいては優秀なスピンク。指示には素早く的確に答え、人間の言葉と感情をほぼ読めます。問題行動を起こさないコの深い問題に気付くのは、とても大変なことでした。そして、大きな事件とともに、私とスピンクとの関係も微妙に変化していきました。その事件とスピンクの劇的な変化とは……続く→

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