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イヌ科イヌ属の家族と暮らす


  そして事件は起きた

事件は、何度かドッグランで一緒に遊んだことがあり、問題ないと思っていた保護者とイヌ科イヌ属のBくんが我が家に遊びに来たことで、勃発しました。

写真ドッグランで問題がなかったBくん、実際にはその時にドッグランで開催されていたBBQに心を奪われていただけでした。食に関心の強いコで、同じイヌ属には興味が薄かったのです。そして、我が家に来てみてわかったこと。Bくんファミリーは、本来はヒトがなるべきリーダにイヌ属のBくんがなっていたのです。「パックストラクチャー=pack structure」が作れていなくて、Bくんのやりたい放題。「パック」はイヌやオオカミなどの群れ・人間の集団のこと、「ストラクチャー」は構造及び機構という意味です。

家中を自由に走り回り、「NO」だろうが「ダメ」だろうが、捕まえて床に押さえこまれても、Bくんは楽しくってしょうがない状態。オモチャを壊して食べようとしたり、体重16〜17kgの中型犬だというのに大型犬用の牛皮のガムを3個も飲み込んだり。パパが咎めてもパパに吠えるし、何ひとつ取り上げられない……。ちなみに、Bくんに対するパパの意見は、「しつけは可哀想。去勢はしない」「自分がされたくないことは、我が子であるイヌ属にもしない」でした。

ウッドデッキにテーブルを置いてみんなで食事をしたのですが、テーブルの上には食べ物、そしてBくんのパパとママ、Bくんのパックに入ったばかりの♀の大型犬がその周りにいて、Bくんはテーブルの下に陣取っていました。テーブルの下でイイコに寝そべっているように見えたBくん。他のコと遊んでいたキューティーがテーブルの前を横切ったら、弾丸のようにテーブルの下から飛び出して、キューティーに襲いかかったのです。

その時はなにがなんだかわかりませんでしたが、今は「イヌ属の心理」を真剣に勉強したので理解できます。Bくんは、もともと性格的にもドミナント。ドミナント=dominantは「支配的な」「優勢な」「優位に立つ」という意味を持つ言葉です。リードをガンガン引っ張る、あいさつも頭からぐいぐい行く。姿勢も、しっぽを立てて足を踏ん張り、胸を張っているのがこのタイプです。ちなみに和犬はもともとこういう体の作りなので、ドミナントと思われてケンカを売られることが多いです。

それに加えてBくんのママとパパは、「しつけは可哀想」と叱りも褒めもしないで「元気ならいい」と育てました。そして、やはり「可哀想だから」という理由で未去勢です。これだけの要素が揃っていたら、Bくんがこのファミリーのリーダーになるのは当然のことだったのです。

テーブルの下にいたことにも意味がありました。パパとママがいて、新入りの♀もいて、おいしい食事の乗ったテーブル。Bくんはテーブルの下に潜り込んで、このスペースを守っていたのです。このスペースにあるものは全部、自分のものだと主張していたのです。

だから、前を通ったキューティーを攻撃した。キューティーは興奮しやすいものの、サミッシブ=submissive。ビビりで、びくびく。ごめんなさい、すみませんという態度に出るタイプです。キャンキャン鳴いて逃げ回りました。するとBくんは大興奮で、マウスィング(軽く噛む)しながらワンワン吠え、キューティーを隅っこに追いつめました。

追いつめられたキューティーは目が泳ぎ始め、私は「あ、てんかんの発作が起きる、まずい!」と思って……続く→

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