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イヌ科イヌ属の家族と暮らす


  流血、そこにスピンクが飛び込んで……

キューティーはてんかん持ちなので、ふだんはかなり気を付けて生活させています。突然のショックで発作を起こすからです。周囲にヒトやイヌ属がたくさんいる状況で発作が起きれば、恐怖とパニックで手当り次第に本気噛みします。恐怖で追いつめられると攻撃に転じてしまうのも、恐がりの特徴です。

かなりまずい状況だと感じた私は、あわてて駆け寄ってBくんのカラーに手をかけ、キューティーから引き離そうとしました。が、Bくん、オシャレなハーフチョークをしていたのです。ハーフチョークは首回りにかなり余裕があります。Bくんはくるりと首を回して、私の手を本気噛みしました。カラーをつかんでいた手の甲から血が飛び散る勢いでした。

写真ここで余談ですが、ハーフチョークはリードにつないで歩くとちょうどイヌ属の耳元にチェーンがきます。こちらが合図としてそのチェーンを「カチャ」と鳴らすことで、そのコに合図や指示を思い出させるためのもので、Bくんのようにそもそも思い出させる合図や指示を教えていないようなコには、使用してはいけないものです。後ずさりすれば自分で抜くことができるし、保定しようとしても自由に動けてしまうので、トレーニングが入っていないコには「百害あって一利なし」なのです。

この事件、一種の事故のように思っていました。イヌ属の心理を勉強するようになって「キューティーと私を襲っているBくんを止めるべきなのは誰!?」ということを理解しました。パパとママは固まっていました。どうでもいいや、と傍観していた訳ではありません。イヌ属との向き合い方、育て方が間違っているだけで、イイ人たちなのです。恐怖で固まったのでしょう。Bくんは、嫌なことがあればいつも噛み、パパやママを病院送りにしていました。

Bくんは、ヒトに勝つ方法をパパとママとの関係から完全に学んでいたのです。だから、嫌なことをした私を噛んだ。Bくんはなーんにも悪くないんです。ヒトであれ、同じイヌ属であれ、他の生き物であれ、噛んではいけないということを教えない親の責任です。

私たちは、イヌ科イヌ属の家族と暮らしています。「このコも家族なんです」「このコは我が子です」ともよく言います。でも「噛みつき」や「吠え」などのイヌ科イヌ属の問題が出た時には、「イヌなんだからしょうがない」とあきらめてしまう。おかしいですよね?

成人した我が子が凶器を持ってよそのヒトや自分たちに襲いかかって来たら「しょうがない」とは言いません。また、刃物を持った成人に対してオモチャやトリーツで気を引いてやめさせよう、とも考えないと思います。

写真保護者の意識が変われば、イヌ属は変わるのです。ああして、こうして、とテクニックを知ろうとするのではなく、イヌ属の心理を保護者側がきちんと理解すること。まず何よりも、イヌ属がどういう気持ちでそういう態度をとっているのかを分析して、きちんと受け止めてあげることなのです。「なんで暴れるのか?」ではなく、その時そのイヌ属に何が起こっているのか、どう対処してあげることでそのイヌ属のバランスがとれるのか、を考えなくては解決できません。

そして、思いがけないことが起こりました。自分のすぐ近くで突然地鳴りのような音が鳴り響きました。それがスピンクの唸り声と気が付くまでに一瞬の間があったほど、私はスピンクの唸り声など聞いたことがなかったのです。 唸り声をあげながら私とBくんとキューティーの間に飛び込んできたスピンクは、白目が真っ赤に充血し、マズルに深いしわを寄せ、牙をむき出し、口角に泡をため、Bくんに襲いかかっていきました。キューティーとBくんの体格は互角ですが、スピンクはそれより10kg以上大きい。とっさに「殺してしまう!!」と思いました。そんな勢いだったのです。

私はBくんのカラーを放してスピンクのハーフチョークをつり上げ、「スピンク NO!!!!」と叫びました。スピンクが飛び込んできたとわかると、キューティーのキャンキャンがギャンギャンに変わり、興奮はピークでした。そのころ、どんなに興奮していても指示が聞ける、というトレーニングを繰り返しやっていたので、それを信じるしかなかったのです。

……スピンクは指示を聞き、座りました。続く→

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